親しい作家に勧められて筒井康隆さんの『創作の極意と掟』を読んだ。

筒井さんは、僕が『トキオ・ウイルス』という小説を文芸誌に連載し始めてすぐに、先輩作家から電話があって、筒井さんが褒めていた、という話を聴いた。その後、文芸時評で、「ベストセラー、間違いなし」と評してくれた。まだ直接、お会いしたことはないが、いい印象がないはずがない。
さて、『創作の極意と掟』だが、筒井さんへの好印象と、作品の評価は別である。作家本人に好印象を抱いていても、作品はアウトという場合もある。こういうケースの場合、辛い。そうならないで欲しいと思いながら読んだ。安心した。
これは筒井さんらしい小説作法の本だ。僕自身も、おこがましくも小説作法の本を書いていて、執筆時に類書を取り寄せて読んでみたが、筒井さんの本は、どの本にも似てない。オリジナルな作品と言える。
凄み。色気。迫力――冒頭から、すぐれた小説には、これらの要素が備わっているというあたり、すでに凡百の小説作法でないことが分かる。さらになかなか説明しづらい、凄み、色気、迫力を、きちんと説明しようとしている。誠実である。
また何と言っても、この本の特徴は、小説作法でありながら、エンターテインメントな仕上がりになっていることだ。読んでいて、面白いのである。これは筒井氏ならではの仕事ではないか。
というわけで、小説の初学者、さらにプロの作家にもお勧めです。